技術情報
振動の単位と規格
変位・速度・加速度
振動の大きさを表す3つの尺度下表に振動を表す基本単位とその意味を記述いたします。
- 変位(displacement):どれだけ動いたか?
- 速度(velocity):どれ位の速さで動いたか?
- 加速度(acceleration):何秒でその速さに達したか?
SI単位 | 実用単位 | 線形振動の場合 | 最 大 値 | |
---|---|---|---|---|
変位 | m |
cm(=10-2 m) μm(=10-6 m) nm(=10-9 m) | x(t)=Dsin(ωt+φ0)…式① | D |
速度 | m/s |
cm/s(=10-2 m/s) mm/s(=10-3 m/s) |
v(t)=dx/dt =Dωcos(ωt+φ0) | V=Dω |
加速度 | m/s2 |
cm/s2(=10-2m/s2) Gal(ガル=cm/s2) G(ジー=9.80665m/s2) | a(t)=d2x/dt2 =-Dω2sin(ωt+φ0) |
A=ω2D …式② |
(初期位相:φ0 周波数:f 角振動数:ω(=2πf) 最大変位:D 最大速度:V 最大加速度:A)
「振動の振幅」というと通常は変位を指します。変位の式①の振幅と言うと片振幅Dになりますが、実際の振動の世界では全振幅(peak to peak)で表示することがあります。混乱しないように区別するときは(p-p)をつけます。
微小振動を測定する場合、加速度センサがよく用いられます。
そのため、実際に測定した「振動の大きさ」は加速度で表すことが多いようです。
加速度の単位ではGal(ガル、cm/s2)が有名です。地震や重力加速度に関する振動加速度で用いられます。
振動が線形とみなせる場合、加速度と変位(片振幅)には式②の関係があります。
A = (2πf)2D
D = A/(2πf)2
例えば、3Hzで加速度2Gal( = 0.02m/s2)の振動の片振幅Dは
D =A/(2πf)2
= 0.02/(2π×3)2
= 56×10-6
= 56 [μm]
となります。全振幅では112μmです。
参考・引用文献
時田保夫・森村正直監修 防振制御ハンドブック
振動(加速度)レベルL
振動の大きさをデシベル(dB)で表示することがあります。これは人の振動公害に関する測定等で用いられます。
「人の感覚は刺激の強度の対数に比例して知覚される」(ヴェーバー・フェヒナーの法則)と考えられているためです。さらに、人間の振動に対する感じ方を考慮して、帯域制限フィルタで周波数補正も行われています。
L=10log(V2/V02)=20log(V/ V0) [dB]
V0 :基準振動加速度
V:振動加速度の実効値(r.m.s.)
基準振動加速度は国内では10-5 m/s2(JIS C1510)です。振動(加速度)レベルと振動加速度の関係は下表のとおりです。
振動(加速度)レベルL[dB] | 振動加速度[m/s2] |
---|---|
40 | 10-3 m/s (0.1Gal) |
20 | 10-4 m/s (0.01Gal) |
10 | 0.316×10-4 m/s (0.00316Gal) |
0 | 10-5 m/s (0.001Gal) |
-6 | 0.5×10-5 m/s (0.0005Gal) |
-20 | 10-6 m/s (0.0001Gal) |
※海外では基準振動加速度に10-6 m/s2(ISO 1683)が推奨されており、注意が必要です。
振動レベルは人が感じる振動の強さを数値化したものなので、精密機器の振動の評価には適していません。
精密機器の振動評価は、一般には加速度センサ等で振動測定をして、FFT等で周波数解析をします。
VCカーブ
近年アメリカから精密機械の許容振動基準としてVCカーブが提案されています。基本的にVCカーブは周波数に依らず速度が一定の規格で、実効速度の1/3オクターブバンドが用いられています。
規格は微振動側に6dB刻みに規定しており、2005年にはVC-F、VC-Gが追加されています。
規格 | 規定値 |
---|---|
VC-A | 260 mG ( 4~8 Hz ), 50μm/s ( 8~80 Hz ) |
VC-B | 130 mG ( 4~8 Hz ), 25μm/s( 8~80 Hz ) |
VC-C | 12.5μm/s ( 1~80 Hz ) |
VC-D | 6.25μm/s ( 1~80 Hz ) |
VC-E | 3.1μm/s ( 1~80 Hz ) |
VC-F | 1.6μm/s ( 1~80 Hz ) |
VC-G | 0.78μm/s ( 1~80 Hz ) |
参考・引用文献
Generic Vibration Criteria for Vibration-Sensitive Equipment, Colin G. Gordon, SPIE99
Evolving criteria for research facilities: I-Vibration